(SS)【よけ藩国 お花見激闘編 後編】

※これは、【よけ藩国 お花見激闘編 前編】からの続きです。


花見が始まってから、はや数時間。
既に多数の負傷者、昏睡者を出しながらもまだ宴会は続いています。
特に青にして紺碧が
「無礼講じゃあぁ! 飲めや! 歌えや! 皆の衆!」
などと、弾けたことを叫んだため(※実際の内容と一部違っております)、花見大会はまさに混沌――カオスになっています。


サイドA:よけ国摂政達の場合

「お姉さまぁ……」
「な、何ですか……い、一体?」
赤い顔をしたうにょは艶かしい吐息を紺碧に吹きかけ、背中にしな垂れかかります。
「わたし……酔っちゃったみたいですぅ」
「ちょっ……うにょさん未成年でしょう! だ、誰か!」
彼女は一切アルコールを摂取していないので、もちろん演技です。
が、しかしちょっと酔いが回っている紺碧にはそのことが見抜けません。やや本気であたふたしてます。
「いやぁ、紺碧さんもてるねぇ……ヒューヒュー」
「実にうらやましいなぁ……ヒューヒュー」
森沢と、結城は心底どうでもよさそうに、適当な反応をかえします。むしろ、「このヤロー、もてやがって!」な敵意に満ちた視線を向けています。
「あぁーん、私も酔っちゃったなぁ……紺碧さぁぁーん」
「ごげ!」
あおひとが面白半分に右腕に抱きつきます。負けじとうにょも左腕にしがみ付いて、関節技をかけます。
「ぎゃーす! あ、あおひとさん、落ち着いて! うにょさんはもっと落ち着いて、折れる! 折れる!」
そして、さらにそこに
「紺碧さーん、何でガミッチ様がいないんですかぁーーーー。わぁーーーん」
泣きながらライトセイバーを振り回すちはが突撃してきます。
「うぎゃああーー! ちはさん、一番落ち着いてぇええええええーーーー!!」
二人を抱えたまま紺碧は紙一重でちはの神速の剣をかわし続けます。もはや、芸術的とさえいえる光景でした。
「どうでもいいから、誰か助けろ! ぎゃーす!」

少し離れた場所で、この光景――紺碧の周りに女性が多数いる――をある男が見ていました。
その名は嘉納。言わずと知れたよけ国摂政です。
「……ははは、落ち着け俺。俺には純子という妻がいるだろう。だから、別にうらやましくないうらやましくないうらやましくない……(中略)……けど、むかつくなぁ」
今までなら、間違いなく突撃したであろう嘉納ですが、彼も成長しました。我慢するのです。
が、しかし…
「紺碧様ー、これ食べてー」
彼が義理の妹と言って憚らない、涼華までが紺碧の元に駆け寄るではありませんか。
彼の中で何かがキレました。例えるなら、理性という山にしがみ付いていた彼の命綱が。
「……ぶっ飛ばす!」
そう宣言すると嘉納はどこかに向かって歩き始めました。


サイドB:よけ国イロモノの場合


―君たちは何をしている?
走っている!
―何故?
決まっている。逃げるためだ!
―誰から?
あいつだ!
―あいつとは?
それは……!
「何も恐れることはありません……さぁ、私と一緒に夢の世界に行きましょう!」
「ふざけんなぁーーー!!」
「やめてくれぇーーー!!」
るぅえんは桃色の息を吐き出しながら、全速力で狩りのターゲットである天志、名も亡き戦士の二人を追いかけます。
「どうして、当たらないんだよ!」
「ば、化け物めっ!」
「愛の狩人るぅえんの前にその程度の弾幕は…無駄無駄無駄無駄!」
重機関銃や、バズーカを乱射して抵抗する二人ですが、しかし一発もるぅえんにはかすりすらしません。
「ふははは、さぁおとなしく捕まりなぁーい!」
「ぎゃあああ!」
「た、助けてくれぇーー!」
この追走劇に終わりは来るのでしょうか……?


サイドC:よけ国女傑たちの場合
「はい? はい、はい……えっ? マジですか?」
無線機で会話をしていた波多江が深刻な顔を浮かべているのに気付いた森沢が声をかける。
「あれ……どうかしたの、波多江さん?」
「その……嘉納殿下がですね……」
「えっ……嘉納さんが、どうしたって?」
『ははは……そこまでだ!』
ものすごぉく有名な決め台詞と共に現れたのは、一機のアイドレスでした。
頭部、胸部、脚部に純子愛(ラブ)と大書きされたアメショー……つまり、専用機に乗って嘉納がやってきたのです。
『青にして紺碧、貴様のその不埒な悪行の数々……いま、償わせてやる!』
「えっと……殿下?」
『な、何だ……波多江さん?』
「非常に言いにくいんですが……既に紺碧さん、気絶しているんですよ」
『な、何で!?』
「……ちはさんの剣を交わす為に、無理に動いて頭を強打しちゃったんですよ」
ちは、うにょ、あおひとの三人がばつの悪そうな顔を浮かべる。
『……か、関係ない! ぶっ飛ばしてやる!』
「ちょっ……殿下!?」
アメショーの背負った4連チューブからATMが4発発射されました。戦車の装甲ですら貫通するATMですから、生身の人間にとっては大きすぎる威力です。
周囲が慌てて逃げようとするなか、一人悠然と佇むのはうにょでした。箒型レーザーを構えると、備え付けのスコープを覗きこみます。
「……ひっさぁあつ、名古屋撃ち!」
実にしまらない掛け声と共に、引き金をしぼるうにょ。4本のレーザーは、寸分たがわずにすべてのATMを打ち落としました。
『な、何ぃ……これならどうだ!』
嘉納専用機は両手にもつ35ミリ機関砲、7.62ミリ機関銃で銃弾をばら撒き始めます。しかし、今度も人影がひとつ立ち塞がりました。
「ちょっと、うるさいですよ……!」
ちはは飛び交う弾丸の雨をライトセイバーで防ぎつつ、アメショー・純子愛(らぶ)号に向かって突進します。
紫電一閃。
35ミリ機関砲、7.62ミリ機関銃共に銃身をぶった切られて、使い物にならなくなってしまいました。
「……また、つまらないもの切ってしまいました……はぁガミッチさまぁ…」
『な、なんだとぉ……』
攻撃手段を全て失って右往左往する嘉納機。好機到来とみて、あおひと、涼華の強力タッグが動き出しました。
「お兄様……おいたがすぎます。反省してください」
「そうです。無礼講とは言えども、すこし羽目を外しすぎです」
アメショーの足元まで駆け寄ると、涼華が足場となりあおひとを真上にリフトアップ。高く飛んだあおひとは、アメショーの頭部をグーでぶん殴りました。
『ぎゃー、なにも見えなくなった』
頭部に大ダメージを受けた嘉納機は暴走を始めてしまいました。変形すると猛スピードで走り出します。
周囲の人間が慌てて追いかける中、波多江は一人苦笑いしていました。
「あー、もはや花見関係ないじゃないですかぁ……」



サイドD:よけ国愉快な仲間たちの場合


「はぁはぁ……いい加減にあきらめなさぁーい!」
「はぁはぁ……ふざけるなぁ! あんたが諦めろ!」
「はぁはぁ……そうだ! そうだ!」
小一時間ほど全力で走り続けたため、三人とも息があがっているようですが、まだ走り続けています。根性、気力というものだけで体を動かしています。
「あー、どうする、ぷーとらさん?」
「えー、助けましょうよ、ナルシルさん?」
「それでは……そこまでだ!」
「正義の使者、ぷーとら仮面、ナルシルマン参上!」
「……コスプレ?」
「……コスプレ!」
「……コスプレ!?」
なんともしまらない格好でぷーとら、ナルシルが参上しました。本人たちにしてみると、カッコいいと思っていたので、三人の反応がショックでした。
「……そんなぁ」
「泣くな、ぷーとらさ…仮面! いつでも、正義の味方は孤独なのさ!」
「あー、それよりも一体なんのようなんですか? 私狩りで忙しいんですけど?」
るぅえんが、頬をぽりぽりかきながら聞き辛そうに二人にたずねます。天志、名も亡き戦士も激しくうんうん頷きます。
「えっと……るぅえんさん、あなたを止めに来ました!」
「」
「ふふふ、ならば仕方がありませんね……からすさん!」
「……愛の狩人、助けに入れということですね? 高く付きますよ」
漆黒のマントをなびかせ颯爽と現れたのはからすでした。その登場の仕方はむしろ、ナルシル、ぷーとらたちと比べ物にならないくらいかっこよかったのでした。
「ま、負けた……」
「うわーん」
ナルシルはがっくりうな垂れ、ぷーとらは泣きながらも、天志、名も亡き戦士の二人に併走します。
「ちょっ……あんたら、何しに来たんだよ!」
「け、結局……まだ走るのか……」
結局、るぅえん(及びからす)に追いかけられるのが4人に増えただけでした……。



サイドE:よけ国腹黒い黒幕たちの場合


「あー、Y(ヤンキー)? 聞こえているか?」
『聞こえている。どうしたK(キロ)?』
「<203高地>と<悪魔の園>、それぞれにかれらが迷い込んだみたいだ。準備はいいか?」
『あぁ、いつでも大丈夫だ。しかし……本当に作動させてしまっていいいのか、あの装置? 下手すりゃ、怪我じゃすまないぞ……』
「大丈夫だ、彼らはその程度では死なない。それに、M(マイク)やH(ホテル)もGOサインを出しているんだ。」
『……分かった。それでは、また後で』
「ああ、後で」
無線機を置くと、Kこと近衛カケルはにんまりと笑った。
「さて、黙って茶でも啜っていますか……」


サイドF:よけ国救護班と傍観者たちの場合

ドッカーン。バンバンバン。パパパパパパパパン。
ドンドン。パチパチパチ。
銃声。砲声。炸裂音。破裂音。
「きゃぁー、なんで落とし穴があるんですかぁ!?」
「お、俺がし、知るかぁー!」
ドスン。
「うわぁ……迫撃砲弾!? は、走れ! 伏せても無駄だ! うぎゃー」
バコン。
「ちょッ……気をつけて、ここらへんすべて地雷原だわ!」
「え、そんなこといきなり言われても……ぁ」
カチッ。
「……動かなければ大丈夫……!」
「……あ」
「もう、馬鹿ぁーー!!」
「ご、ごめんなさぁーい」
バッコーン。



花見会場中を流れる壮大な戦場音楽。
黒崎は冷や汗を流していました。
「だ、大丈夫かいな……みんなは?」
「さぁ……どうでしょうか、わかりませんね」
一方、安東は涼しい顔をしてビールを飲んでいます。
「ちょ、そりゃないで……」
「黒崎さん、逆に聞きますが。あの人たちが、この程度で死ぬと思えますか?」
「……お、思えん」
「でしょう? なら、そういうことです。ほら、他の人たちだって…」
ヘタレはハリセンで素振りをしていますし、帽子猫は寝ています。
「まぁ、気にしたって仕方ないですよ、黒崎さん。安東さんの言うことが正しいですよ」
「ムニャムニャ……怪我の手当てをする準備だけはしておくといいにゃあ…ムニャ」
「「「ね、寝言!?」」」
恐るべし、帽子猫でした。
「疲れた……」
「おっ、結城さん。今まで、どこにおったん?」
「うん? あー、まぁちょっとね」
どこからかふらりと、現れた結城。彼の体からはやけに強く、火薬の香りがしました。
そこことを一同は疑問に思いましたが、あえて追求はしませんでした。
「……Y(ヤンキー)、任務完了」
『お疲れ様でした。報酬は指定の講座に』





――この日の花見が、成功したのか、失敗したのか……それは、個人の考え次第である――
<花見報告書末尾より>

(波多江)

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この記事へのコメント

青にして紺碧
2007年05月04日 04:19
なんかとってももてもてじゃーんとか思ったらやっぱりそうきたかorz
森沢
2007年05月04日 15:22
おお、完成おめでとうございます。大作ですね!
はらぺこ的には腹一杯食べられて満足至極ですが、MとHとスポンサーの正体が気になりますw。
亀助
2007年05月04日 15:54
でんせつのあんさつへいき。以降涼華の料理は危険物なんですね;(リアルは料理上手ですよ。フォロー)波多江さんお疲れ様です。笑えました!
ツグ@わかば
2007年05月05日 22:43
前編だけですごいと思ったけど、後編はさらに激闘が!とても面白かったです。波多江さん、長編お疲れさまでした。