(SS)キャベツ畑の悪夢

「にゃーにゃーん♪にゃー♪」

ある日の午前中。
亀助は鼻歌を歌いながら、今日着る服を選んでいた。

「ピンクかにゃ~。ブルーかにゃ~。思い切ってオレンジかにゃ~。」

小さいトランクから、ワンピースやら、スカートやらを取り出し悩んでいる。

「ん~、茶色のチェックのワンピにするにゃ~。」

気合いを入れたおしゃれ。
作ったお弁当をリュックに入れて、シンタロウの元へ向かう。

「今日は長く散歩するにゃ~。」
「クェ。」

今までは、一日中家に居て、シンタロウをかまっていたが、もうすぐ、そんな時間は少な
くなる。
亀助はよけ藩国の正式な国民となったからだ。働くのは国民の義務。しかし、まだ仕事は
決まっていない。
時間がある間はシンタロウと一緒に居たかった。これから寂しい思いをさせてしまうから
。今は一緒に居たかった。
シンタロウにはナンバープレートを、自分の胸にはわかばマークを付け、散歩へ出かけて
いく。
―その後に待つ悪夢を知らずにー

よけ藩国全体を見て周って来た亀助とシンタロウは、ある畑で足を止めた。

「うにゃ~、大きいキャベツだにゃ。」

以前ココを訪れた時は、何もない畑が延々と続くだけだったが、今は畑のすみずみまで、
巨大なキャベツが並んでいる。
シンタロウは興味深々、キャベツに近付く。

「シンタロウ、食べたらめー。だよ?」

亀助に注意されながらも、シンタロウはキャベツが気になってしかたがない様子だ。
顔を間近まで近付ける。
亀助は「コラッ。」っと言おうとした直前。
目の前にあったはずのキャベツが消えた、二匹の頭上にキャベツが浮かんでいる。
その中心には鋭い牙が見えた。

「んにゃぁっ!?」

驚いた亀助だが、シンタロウの手綱を操り、キャベツ?の下から逃げた。

亀助が出会ったキャベツは正式には【避けろキャベツ】と呼ばれるキャベツに擬態した肉
食獣であった。
それを知らない亀助とシンタロウは安易に【避けろキャベツ】に近付き、喰われかかった

「シンタロウ!逃げるにゃぁ!」

広大なキャベツ畑を突っ切る。後ろからはキャベツが飛び跳ねながら追って来る。

「何でだにゃぁぁ!アレ、キャベツじゃないにゃ!エイリアンだにゃーっ!!」

混乱しながらも逃げる。
突然、シンタロウが倒れ、亀助は畑に転がり落ちた。
ゴロゴロと地面に転がり、踏ん張って立ち上がる。

「シンタロウ!?」

亀助が見ると、シンタロウの脚にキャベツが噛み付いている。
2匹を追いかけるキャベツとは違うキャベツがシンタロウを襲っていた。

「あ…ぁ。シンタロウから離れるにゃぁぁぁ!!」

リュックからお弁当を取り出しキャベツに投げる。
今日のお弁当はカツサンド。
その香りに誘われたのか、【避けろキャベツ】はシンタロウから離れ、カツサンドを追い
かけている。

「シンタロウ!」
「…ぴぃ、ぴぃ」

シンタロウの脚には鋭い歯形が残っており、そこから血が流れ出ている。
タオルで止血しようにも、牙は深くまで刺さっていて、血は止まらなかった。

(この傷じゃ、シンタロウは走れないにゃ…。)

どうやってここから逃げるか、考える時間は無かった。

血の臭いに誘われた【避けろキャベツ】達が動きだし、亀助とシンタロウは取り囲まれて
しまった。

(逃げる道はにゃい、シンタロウは動けない。)

【避けろキャベツ】達はまるで喜んでいるかのように口を開いたり閉じたりして、牙を見せ
つけ2匹に近付いて行く。

(何で!何で畑でキャベツに襲われなきゃいけないんだにゃ!!しかも喰われたら死ぬに
ゃ?デットエンドにゃ!?)

亀助はシンタロウを背中に庇い、ぐるぐるになる。

(シンタロウを助けなきゃ!何とかしなきゃ!どーしたらいいにゃ!)

近付くキャベツ。追い詰められる猫とタイガー。
絵的には笑える。

(今死んだら…小助に会えないにゃ!)

その想いに亀助は顔を上げた。

(ここに居るのは、小助を幸せにしたいから。その為なら…何だってやる!やりたい!そ
う決めたにゃ!!)

キャベツ達をにらみつける。

「…絶対絶命な状況。でも!絶望の先には希望がある!…やったもん勝ちにゃぁぁっっ!


亀助は黒い手袋をはめると声を張り上げた。

「私の名は亀助!4月30日の王より希望のかけらをもらった漢っ!」

手袋を付けた手を真直ぐ前に伸ばす。

「風のぉ~っルクドリウスッ!」


(絵:亀助)

亀助の足元から風が生まれる、柔らかい風は亀助とシンタロウをそっと包むと、【避けろ
キャベツ】に向かい真空の刃を振い、次々と八つ裂きにしていった。


…風が収まり、周りを見渡すと、そこはただのキャベツ畑。【避けろキャベツ】達は跡形
も無くバラバラにされ、風に吹かれて散っていた。

それから亀助はシンタロウを病院へ運ぶ助けを求め、近くの農家に駆け込んだ。


出血は何とか止まり、絶対安静と鉄分の薬を処方された。
無事に家に戻った亀助とシンタロウは黒崎からの連絡を受けた涼華に迎えられ、抱き締め
られた。

「今の時期のキャベツ畑は危ないんだにゃ!もう行っちゃ駄目にゃーっ!」

涼華は亀助を叱るが、亀助は(【避けろキャベツ】を知っていたなら、先に言ってくれよ
っ!)と思った。

「でも、無事に帰って来て良かったにゃ…。あんな怪我したのに、シンタローちゃんが走って逃げたにょ?」

涼華の問いに身体をビクッとさせる亀助。
涼華はその一瞬を見逃さなかった。

「…助…一体、何したにゃ…。」

亀助の頭をがっしりとつかみ、無理矢理目をあわせる。無言だった亀助は諦めたように話し始
めた。

「…裏技を使ったにゃ。」
「裏技?」
「にゅ、助は国民登録する時に、性別を‘漢’にしたにゃ…。だから、ウェーブデビルの召喚できるかにゃ~って…。」
「できたの!?相棒は?」
「ロジャーは一人で月奏を使役してるにゃ!だから、ノリで何とかなるかにゃ~っと思って。」

―涼華は絶句している。―

レムーリアの設定なら、一人で『魔』を召喚する事は世界の破滅を意味する。それをノリの一声で終わらすなんて…。

「…いくらアイドレスの世界がノリ21%笑い37%シリアス 42%で出来ていても、やり過ぎに
ゃぁぁ!!!」
「やらなきゃ殺られてたにゃ!キャベツに喰われて死ぬなんて嫌にゃぁぁ!!」

小屋で熟睡するシンタロウをよそに、今夜も涼華の家はやかましく過ごすのだった。


―終わり―

(亀助)

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この記事へのコメント

青にして紺碧
2007年05月13日 20:43
摂政です。

うち、勤労の義務とかありませんから!大丈夫ですから!
ナルシル
2007年05月14日 12:21
やったもん勝ちに妙な共感を覚えました(笑)

亀助さん、また腕を上げなすったのう。
亀助
2007年05月14日 19:36
地道に猫医師として、日々暮らしていますよ~。…やったもん勝ち。コレがやりたくて『性別・漢』選びました!!