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zoom RSS 甘い生活〜お正月編〜

<<   作成日時 : 2008/01/13 00:04   >>

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元旦、蒼の夫妻の一年最初の日は、いつもと同じように始まった。
二人とも、熟睡中である。

寝室の大半を占拠しているキングサイズベッドは、藩国摂政青にして紺碧の陰謀で、二人が新居に入る前に運び込まれていた。
なぜツインではないのかというと、甘えたのあおひとの事、ツインにしても忠孝のベッドに潜り込むなり駄々をこねるなりして一緒に寝るのは目に見えていた。
あおひとの性格と行動を読みきってのキングサイズベッドである。さすがは摂政、観察眼は大したものだ。

だが、そんな彼ですら、今のこの二人の状態までは読みきれなかったに違いない。
読んでいたら今頃、糖分摂取のし過ぎで病院送り確実だ。
すやすやと気持ちよさそうに眠っているのはいい。ただ、その体勢が問題なのである。

忠孝はあおひとを後ろから包み込むように抱きしめ、手はお腹に回されている。
微妙に際どい所に置かれているような気もしないでもないが、そこは深くつっこまないことにしよう。それが一番いい気がする。
はたから見ている者にとっては相当の殺傷力を持つこの体勢は、世間でラッコ抱っこと呼ばれていた。
この二人、眠っていてもゲロ甘だった。

「んー……」
あおひとの目がゆっくりと開いていく。
寝ぼけまなこのまま手元の携帯で時間を確認。午前七時半。
今日はお正月だし、もう少し寝ていてもいいかなぁなどと夢うつつで考える。
おせちは昨日までに用意をしてあるし、鏡餅や門松などもセッティング済みだ。
「おせちりょうり…」
おせち料理の事を思い出して、あおひとの表情が沈む。

実は彼女、料理はあまり得意ではない。
忠孝と付き合うようになってから料理、特に和食を勉強し始めたのだが、まだまだである。
夫の忠孝のほうがよっぽど手際がいい始末だ。
用意したおせちだって、あおひとが手ずから作った物といえば、甘栗と黒豆くらいだった。

「お菓子はうまく作れるようになったんだけれど…もっとお料理、勉強しないと」
思わずため息をついてしょんぼりする。いい奥さんになるためには、仕事ばかりではいけない。家庭のこともしっかりしないといけないのだ。
特に料理は、自分で定めた合格ラインよりもかなり下なので努力する必要があった。

と、ようやくここで、忠孝の手の位置に気がついた。真っ赤になってあわあわしだす。
このままでは色々まずいと思い手をどかそうとするが、それで起こしてしまっては申し訳ないと考え、結局何も出来ない。
「ぁー………うぅ……」
困り果てたあおひとは、意を決してもぞもぞと腕の中で動き始めた。
起こさないように、慎重に、体を反転させる。
対面するように向かい合うと、忠孝の背に腕を回した。ぴとっと体を密着させる。
これなら、まぁ、多少まだアレだが、さっきよりかは大分ましだ。
何より、忠孝の顔を見れるのがいい。

今は閉じられている瞳だが、あおひとはあの半眼が好きだった。
本人に告げると決まって「えー」という顔をされるが、それくらいではめげない。
好きなものは好きなんだからしょうがないのである。
勿論好きなのは目だけではなく、忠孝の全てなのだが。もう、べた惚れだった。

あおひとは幸せそうに忠孝を見つめていた。
「素敵だなぁ、可愛いなぁ、かっこいいなぁ」としきりに呟いている。この女、全力で本気だ。
放っておけば何時間でも忠孝の顔を見つめてうっとりとできるあたり、確実に変態である。
「えへへー、忠孝さんのにおいー」
訂正。ど変態だった。

あおひとは胸にすりすりと擦り寄る。と、固いものが当たっている事に気付いた。
目を向けてみると、パジャマの胸元からクリスマスに贈ったネックレスが覗いていた。
トップ部分は天使の羽がモチーフとされていて、一粒、象牙がはめ込まれている。
街を散策している時にたまたま露店で売り出されているのを発見。勿論一目惚れ、即購入だった。
なにより、象牙というのがよかった。
象牙は五月十三日の誕生石。その日は、あおひとの誕生日だったのだ。

「自分が贈ったものを身につけてもらえるって、嬉しいなぁ…」
ほわーんと幸せそうに笑うあおひと。
少し照れくさそうに、自分の胸元を押さえる。
「いつか、おそろいのものをしてるって、ちゃんと言えたら…いい……な………」

忠孝の腕に抱きしめられて。
体温が心地よくて。
心音が心地よくて。
あおひとはゆっくりと目を閉じた。



腕の中から聞こえる呼吸音が規則正しくなった頃、忠孝は目を開けた。
最初から起きていたのだ。勿論、際どい所に手を置いていたのもわざとである。
慌てるあおひとの姿をみたかったらしい。そして彼女は予想通りの行動をしてくれた。
思い返して小さく笑みをこぼす。
「本当に期待を裏切らない…分かりやすい奥さんですね」
気持ちよさそうに眠っているあおひとの額にそっとキスをした。

分かりやすいのは好ましいと思う。少し鈍感な所も可愛げがある。
しかし、彼女の無邪気な所は少々持て余し気味だった。
今だって、もう少しで狸寝入りを崩してしまうところだったのだ。
まさか自分の顔を見つめてあんな事を言うなど、これっぽっちも予想していなかったのである。

この甘えたな妻は、時折予想外の行動をする。
よく、翻弄されているなどと言っているらしいが、翻弄されているのはこちらも同じだった。
「貴方はとんでもない事をさらっと言いますからね…」
忠孝は数日前、ベッドの中で交わされた会話を思い出した。

「忠孝さんとキスするの、好きですよ」
これはまだよかった。問題は次だ。
「おひげがあたってちくちくするのも好きですし…」
言っていて恥ずかしかったのか、真っ赤になっていた。
いや、言われた方も盛大に恥ずかしかったのだが。

忠孝は思い返してまた頬を染める。
「本当に、自覚無く言うのは困りものですね。計算して言われる方が、まだ割り切れる」
そう呟く忠孝の目は優しかった。

結局の所、この甘えたで照れ屋で恥ずかしがり屋でさみしんぼうの癖に、意外と積極的で大胆な所に惚れたのだ。
彼女の前では自身も相当素直になっている事だろう。
遠まわしに言っても鈍感なあおひとに気付いてもらえないというのもあるが、あの純粋な笑顔を見ていると、そうするほうがいい気がしたのである。
それに、いつまでたっても初々しくて可愛いのもいい。
忠孝はあおひとの胸元に手を伸ばすと、自分と同じ形のネックレスを取り出した。

こっそりと同じものを身につけているなんて、なんといじらしいのだろう。
あおひとがこれを身に着けていることは、最初から気付いていた。
クリスマス以降、時々幸せそうに胸元を押さえる妻の姿を見逃すほど、忠孝は無関心な夫ではなかった。
お腹ならばそこには新しい命が宿っているのだから分かる。
だがなぜか胸を押さえる姿が気になって、あおひとが眠りに落ちてからそっとその胸元を覗いてみた。
少しばかり犯罪者のような気持ちになりながらも、夫婦なのだから問題がないだろうと無理やり自分を納得させる。

指先に伝わる冷たい感触をたどって行った先には、忠孝がしているネックレスと同じものが、大切そうにしまわれていた。
自分のものと違うのは、素材がシルバーではなくピンクシルバーだという点。
そして、トップにはめ込まれているのがダイヤモンドだという所だ。
それを見て忠孝はピンと来た。
ネックレスと共に贈られてきたカードには、あおひとの誕生石の象牙を、と書かれていたのだ。
ならばこのダイヤモンドは、自分の誕生石なのだろう。
そんな妻のささやかな行動が愛しくて、その日忠孝は幸せな気分で眠りについたのだった。

「たまたまお互いの誕生石をあしらったネックレスが売っていたなんて、作為的な何かを感じますが…」
苦笑いを浮かべながらあおひとの頭を撫でる。
すると、あおひとが気持ちよさそうに掌に頭をこすりつけてきた。
驚いて見つめるが、眠っているのは間違いない。
自分のように狸寝入りを貫けるほど、器用でもあざとくもないのはよく分かっているのだ。
だから今の行動は無意識なのだろうが…無意識だからこそ、たちが悪い。
誘っているのならこのまま事に持ち込めるのだが、そうではないのだから我慢するしかないのである。

「いつか、私の理性が崩れても知りませんよ」

忠孝は困ったように笑うと、あおひとの唇にキスを落とす。
小さく吐息を漏らす妻に、早速たがが外れそうになった。
忠孝は何事か呻いて思案した結果、全てを脳内の隅に追いやって眠ることにしたようだ。

今年も、我慢の年になるのだろう。
そして、自分の理性が崩れるのは、そう遠くないはずだとも思いながら。



(文:あおひと)

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