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zoom RSS 【助のシンタロウ日記・2】

<<   作成日時 : 2007/03/30 02:01   >>

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※こちらは、【助のシンタロウ日記】からの続きです。

それは、シンタロウと亀助が病院に乗り付ける少し前のお話。


本日は、ぽかぽかの晴天。サイコーの日光浴日和。
亀助はおぼんに急須と湯飲みを載せ、庭に出て熱い焙じ茶をすする。
横にはタイガー・シンタロウが座り、目をとじている。温かくて気持ちが良いのだろう。
また一口お茶をすすると亀助はふぅ〜と息を吐き、呟く。
「…幸せだにゃ〜」
真っ赤な薔薇や白いパンジーは無いけれど、自分の横にはシンタロウ。
休みの日なら、涼華も一緒に二人と1羽でぽやや〜んと出来るだろう。

飲み終わった急須や湯飲みを片付けるため立上がり、いったんリビングにおぼんを置きに行った。

ハッと後ろから感じる気配に振り向く。
シンタロウが立上がって亀助に向かって‘突進’して来る。
「シンタロウ、愛の体当たり&頭突き」
今日も亀助はシンタロウにど突かれた。

シンタロウは、人に甘える時の力加減を知らない。
虐待を受け育った環境では、甘える、事は出来なかっただろう。
涼華の家に来て、やっと‘甘える’と言う感情を持てた。
そして、嬉しいままに突っ走り、体当たり、頭突きのコンボ入力。
そんなシンタロウに亀助は
「こらっ!駄目にゃぁ!!」
と頬に平手打ちをする。
叩かれたシンタロウは、とても悲しい眼をして亀助を見る。
亀助だって、シンタロウを叩いたりはしたくない。手と心が痛み、泣きたくなる。
でも、心を鬼にして躾をしなければ、亀助はそう考えていた。

最初は小屋から出てこなかったシンタロウも、日を追うごとに環境に慣れ、庭を散歩するまでになった。
そのうち、外へ散歩に出掛けられる日が来るかと、期待していたある日、シンタロウの悪癖を知った。

手加減無しの体当たりと頭突き。

それは、甘えている事だとは分かった。対象が、亀助一人の頃は(しょーがない、かにゃ。)と思っていたが、しばらくすると涼華にも体当たり&頭突きをする様になった。

それを見た亀助は、シンタロウが人に慣れるのは嬉しい。でも、今のままだと他人を傷付ける子になってしまう!
それから、シンタロウに躾をする決心をした。

小鳥の躾と違い、成鳥の躾は簡単にはいかない。躾用に鞭なども有る。
…でも亀助は鞭は買わず、自分の手を選んだ。シンタロウだけに、痛い思いはさせたく無い。
叩けば痛い、けれど、自分もシンタロウも同じ痛みを感じる。そう思っての選択だった。


でも、現実は厳しい。

避けタイガーとして、極限状態で育てられたシンタロウの筋肉は、並みでは無かった。
素人がプロの挌闘家を殴っても拳を痛めるだけである。
初めてシンタロウを叩いた時、亀助は手首を捻挫した。

涼華に治療してもらっている間、ずっと「バーカ、バーカ。」と言われ続けた。
全身痣と擦り傷だらけ、さらに手首の捻挫。

「タイガー飼育のプロに躾を任せたらどうかにゃ?」
涼華は提案した。
亀助が心配なのと、シンタロウの今後を考えたら、一番良い考えだ。
しかし亀助は、自分がやらずに誰がやるっ!っと某3年B組の担任のごとく、熱血し、涼華の提案を却下した。


日々、体でぶつかりあい、根気よく「待て」と「お座り」を教える。
名を呼び、近付いて来たら「待て」をさせ次に「お座り」をしたらおやつを与え撫でやった。

継続は力なり。
毎日教え続けていると、シンタロウの「愛の体当たり&頭突き」の回数は減り、歩いて近付いて来て、座って「かまって光線」を出す様になった。

(これなら、よその飼い主や、道で人に会っても大丈夫にゃ〜!)

亀助、心でガッツポーズ!!
まだ「愛の体当たり&頭突き」が無くなった訳ではないが、先は明るい!
希望を持ち、シンタロウの小屋を掃除する亀助に、また別の問題が浮上した。


その日、シンタロウは庭をぐるぐると歩いていた。
「シンタロウ、何してるにゃ〜?」
呑気に亀助が声を掛けると、シンタロウは亀助の襟首をくわえ、背中に乗せた。
「にゃんにゃーっっ!?」
突然、地上から2m弱の背中に乗せられ、亀助はびびっている。
しかし、シンタロウの方は満足そうにそのまま庭をぐるぐると歩き出す。
不安定な背中で、捕まるのは首やその周りの毛しか無い。
必死でシンタロウにしがみつく亀助をよそに、シンタロウ自身は楽しそうにクゥクゥと鳴いている。

庭を何周かすると、シンタロウは止まり、座った。
やっと地上に降りれた亀助は、突然の恐怖に脚がガクガクで、その場に座りこんだ。
「にゃ…何?どーしたにゃ?シンタロウ?」
シンタロウの顔を見る。
何やらご機嫌で、満足そうだ。
「うにゃぁ?」


次の日、亀助は再びシンタロウの背中に乗せられた。
「シンタロウ、いったいどーしたにゃ?」
真直ぐに瞳を見つめ、話かけてみる。
…何時もの甘えた瞳と違う輝きがあるのを感じた。
「う〜ん、何だか厳しい顔つきな気がするにゃぁ。」
亀助を乗せ、庭を歩くシンタロウ。
よろよろし、落ちない様に必死になる亀助。
そしてまた庭を何周かすると座り、亀助を降ろした。
「シンタロウ、目付きが怖いにゃ…。何がしたいにゃ?」
眼を合わせ、じっと観察する。
シンタロウは何かを求めている。
避けタイガーが求めるもの…。
「…シンタロウ!タイガーライドに出たいにょ!?戦いたいにょ!?」
誇らしげに「クェーッ!」っと鳴く。
「そんにゃ、シンタロウはもう戦わないでいいんだにょ!?ここでのんびり暮らす方が幸せだにゃ!」
説得する亀助にシンタロウは再び「クェーッ!」っと鳴く。
「シンタロウ…。」
…ずっと、避けタイガーとして虐待され、育てられたはずなのに、シンタロウはプライドを持っている。
ペットではなく、避けタイガーとして生きたい。そんな力強い眼だった。
「…シンタロウなんかもう知らないにゃ!絶対、タイガーライドに参加なんかさせないにゃ!」
亀助はそう叫ぶと家の中に入って行った。


静かな家の中、時計の音だけが響く…。
(シンタロウの幸せって…何かにゃぁ…。)
漠然とした気持ちで考える…。
…。
家の棚の片隅にしまった袋を取り出す。中身は、シンタロウが家に来た時に付けていた手綱。
(…やっぱり駄目にゃ。コレは、シンタロウの傷跡にゃ)
前の飼い主が付けた手綱、それを捨てずに取っておいた。
(コレは、シンタロウの傷が目に見える様に残した物にゃ…。ソレをまた、シンタロウに付けるなんて、考えたく無いにゃ。)


亀助は、家の戸締まりをすると、ある店に出掛けて行った。

それは家から一番近い「タイガーグッズ」が売られているお店。
タイガーの手綱の値段を見に来たのだ。
(あくまで、値段を調べるだけで、買いに来たんじゃ無いにゃ!)
そう思い、ならぶ手綱の値段を見ると、亀助はガッカリした。
安くても6000にゃんにゃん、タイガーライド用になると3万にゃんにゃんはする。
自分のおこずかいはシンタロウのお世話グッズに使ってしまった。こんなに高い品は買ってあげられない。
(シンタロウが幸せになるなら、タイガーライドにエントリーする覚悟で来たにょに…。)
覚悟以前に、金銭的な問題に落ち込んだ。

家に戻り、小屋に居るシンタロウに「ごめんにゃ…。」と呟いた。

夕飯時になり、涼華が一度家に帰って来る。食事を済ませたらまた病院へとんぼ返りだ。
「助?元気がないにゃ?少食なのは何時もの事だけど、どーしたにゃ?」
「うにゃ…。シンタロウの事にゃ。躾って難しいのにゃ〜。」
手綱の事は相談しない。
お金が関わる事は人に頼りたく無い。
「でも前より甘え上手になってるにゃ、後少しだにゃ〜。」
涼華は笑う。
亀助も頑張って笑った。


それから、亀助はシンタロウの背中に乗る練習を始めた。手綱無しに背中でバランスをとるのは難しい。
でも、シンタロウは歩くだけで、走る事はしなかった。
歩くだけの速度でなら、だんだんコツを掴みタイガーの動きに合わせ体を動かす事も覚えていく。
「最近、シンタロウと歩くのが楽しくなって来たにゃん!」
「クェッ!」
シンタロウが答える。
「…シンタロウは、誰かと一緒に走りたくて、タイガーライドに出たくにゃったにょ?」
「クェ〜?」
「にゃ、難しい事は分からにゃいよね。」
ただ、戦うだけでは無く、人と一緒に走る事を喜びと感じる様になったのなら、亀助は嬉しかった。

「にゃ〜少し曇ってきたにゃぁ。…シンタロウ、もう少し背中に乗せてにゃ。」
「クェ!」
座っているシンタロウの背中に乗る。
後少し、歩く練習をしたら終わりにしよう。そう思って背中に乗った。
シンタロウが歩き始めると、急に空から落雷が落ちた!

―ピシャーンッッ!!―

その音は、空から振り下ろされた鞭の様。
「クケェェェッッ!!」
シンタロウは、その音にパニックを起こす。
「シンタロウ!平気だにゃ!怖くないにゃ!!」
亀助は暴れるシンタロウの背中から、なんとかなだめようとする。
しかし、錯乱するタイガーの暴れ方はロデオ以上、つかまる手綱も無しに、素人が乗っているのは不可能だった…。
「ケェェッ!クケェェェッッ!!」
シンタロウはその場から逃げる様に走り、小屋の壁に体当たりした。
シンタロウが走り出した時、亀助は地面に落ちた。




―?
亀助は気がつくと白い部屋に居た。
(あぁ、病院のベッドだにゃ…。)
すぐ横で、泣叫ぶ声が聞こえる。
(これは、涼華の声だにゃ…。)
「頭には問題ありません。落ちた時に左手で庇ったんだと思います。左中指、薬指骨折、あと左肩脱臼捻挫ですね。」
落着きのある男性の声が聞こえる。
「ここ…病院にゃ…。」
亀助が力無く呟くと、涼華は泣きながら本気で叫んだ。
「何しよったんじゃ、こんボケーッ!」


シンタロウから落ちた亀助は、そのまま失神したらしい。
いつもより早く帰った涼華は、庭に倒れる亀助を見て、脈、頭や首に外傷が無い事を確かめると背負って病院に向かった。
そして亀助は、手綱の事、手綱無しにタイガーに乗る練習をしていた事をバラした。
涼華の嵐の様な説教は2時間ほど続いた。

数日後、全治一ヵ月ではあるが退院出来た。
家に戻って真っ先にシンタロウを呼んだ。
「クェ!」
小屋から顔をのぞかせ、真直ぐに走ってくる。
(にゃっ!?これは、愛の体当たり&頭突き!?)
そう思って避けようとしたが、シンタロウは手前で止まり、亀助の顔にそっとすりすりした。
「シンタロウ、もう大丈夫にゃ。」
首を撫でて語りかける。


その日、涼華の家に客が来た。
「よぉ、亀やん。退院オメデトー。」
「にゃぁ、かっちゃん。わざわざ来てくれたのにゃ?」
「涼ちゃんが退院祝いする言うから、わざわざ来てやったんやで。ありがたく思いや。」
その日はお赤飯に茶碗蒸し、鳥の唐揚げ、などなど食卓に並べられた。
涼華と黒崎はビールで乾杯したが亀助はリンゴジュースで少し涙した。
「全治一ヵ月、治るまで禁酒にゃ!」
「はいにゃ…。」
「ほんま、亀やん、阿呆やなぁ。フリーハンドでタイガー乗ろーやなんて、超一流選手のパフォーマンスやで。それを初心者がやろなんて、ホンマ10年早いわ。」
「うっ…。」
亀助は事実なので何も反論出来ない。
下を向いた亀助を見て、涼華と黒崎は目で合図をする。
「ほれ、これ。退院祝いや。」
黒崎は本屋の紙袋に入った何かを亀助に渡した。
「にゃっ!?手綱にゃ!?」
「自分と零のお古やけどな。それでも、ライドにも使えるええ品やで。」
「にゃ!良いにょ!かっちゃんありがと〜!!」
亀助はシンタロウに手綱を見せに走って行った。

「…亀やんて、日頃小悪魔な割に、時々めっさ単純な時あんなぁ。」
「にゃ、でも新品を買ってそのまま渡したら、素直に喜ばないにゃ。」
「まぁ、この西で慣らした値切りの技で、閉店セールの特価品をさらに値切ったったからな。店のおっさんヒィヒィ言わせてやったわ。」
「かっちゃんとワリカンで買ったけど、悪くないかにゃ?」
「なに言うねん、涼ちゃんに譲ったけど、ほんまならシンタロウ自分のタイガーなんやで?零の弟みたいなもんや。気にせんでええよ。」

「涼華お姉様!かっちゃん!シンタロウもあの手綱気に入ったみたいにゃー!!」
「おー、そらよかったわー。怪我治ったら零とも遊ぼうな。」
「にゃ。治るまで手綱は没収しておくにゃ!」
「にゃー!!手元に置くぐらい許して欲しいにゃーっ!」

後日、完治した亀助はシンタロウに手綱を付け、走る、跳ぶまでマスターし、ナンバーを貰うと避け藩国を片っ端から走り回る様になる。それは少し後のお話。


−終わり−

(亀助)

※亀助さんは「アイドレス」には参加されていませんが、ご本人の許諾を得てこちらのSSを藩国内に転載させていただきました。ありがとうございます。(青にして紺碧)

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
黒崎さんの「西で慣らした値切りの技」( ̄□ ̄;)

……国民の追加設定に加えてもいいですか?
青にして紺碧
2007/03/30 02:02
いいよ(笑)
黒崎克哉
2007/03/30 04:21
亀助さん、NPCとしてでも次のタイガーライドに出てもらいませんか?
/いやもう、凄い好きです(笑)
りゅうへんげ@わかば
2007/03/30 06:21

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