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zoom RSS バレンタインSS【前編】

<<   作成日時 : 2007/02/14 17:16   >>

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時は、2月13日。
 避け藩国、晴天なれど波高し。

***

  『恋愛ブルジョアジー階級によるッ、恋愛資本主義爆砕ィィィ!』
   『フラレタリアートのォ〜同志よォ〜、今こそ立ち上がれェェェーッ』

遠くより響いてくる怒号に、窓際の日溜まりでうたたねをしながら耳をぴくぴく
していたガミッチ様だったが、ふいにその声がぷつりと途切れて聞こえるのはそ
よそよとそよぐ葉擦れの音だけになると、小さなため息をつき、再び安らかな夢
の世界へと旅立った。


「そんな馬鹿なことしている暇があったら、仕事手伝いなさい!」

ヘルメットをかぶり、魂の悲鳴ににも似たシュプレヒコールをあげて街道を練り
歩いていた「バレンタイン爆砕デモ隊」の男達は、いきなり殺気だった女性陣に
取り囲まれ、ぽいぽい麻袋に詰められて根こそぎ拉致された。

連れてこられたのは、格納庫である。
目の前には、お金を貯めてようやく買った、ぴかぴかのI=Dアメショー。

「な、なんだなんだ」
「仕事って、訓練か?」
「さっさと乗って。指示はインプットしてあるから」

男達はわけのわからぬまま、すべての火器をとりはずしたI=Dに乗り込み、電源
を入れてスクリーンを調べる。

「…牧場に行け?」
「…俺は、水車のとこ?」
「…森の中?」

なんのかんのいっても、避け藩国の男達は女性に弱い。
とりあえず、言われたままに彼らは分かれて移動した。

***

避け森に分け入った一団は、純粋な幼き者しかたどり着けぬといわれる幻の木イ
チゴ畑を求めひたすら彷徨った。
I=Dに乗っているとはいえ、昨日作った地図も役に立たぬ避け森のカオスぶりで
ある。日もどんどん暮れてきて、皆が“もう帰りたいよーおかあさーん”、とい
う、ただその一心のみになった時、ようやく夕日に染まってなお赤く色づく木イ
チゴ畑が目の前に広がり、男達は涙したという。

牧場に移動した男達は、己の技の限りをつくして避け牛を追いかける羽目になっ
た。
そこここに転がっている避け鳥の卵を踏みそうになって、任務はどこへやら避け
鳥の集団に追いかけられ逃げ回っている者も続出、牧場はいつもの静けさからは
一転、阿鼻叫喚の場と化した。
ようやく確保した牛から規定量を搾乳し、即応セットのかわりに巨大なミルク缶
を背負って格納庫に戻ってきたのは午後もだいぶ経ってからであった。

巨大水車の前にたどり着いた一団の前に置かれたのは、I=Dでしか扱えないよう
な、超巨大な杵と臼。

(………? 今どき餅つきをやれってことか?)

横には、自分たちが入れられた麻袋と同じようなものが山と積まれている。
山の頂上には、白い紙に次の作業指示が黒々と箇条書きに書かれピンで止められ
ていた。

1. この中身を臼に移して、搗く。
2. 粗く粉砕して、その後水車で細かく挽け。
3. ペースト状になったものを、速やかに格納庫に持ち帰れ。

おそるおそる男達が開けた麻袋の中身は、ローストしたカカオ豆であった。

(も、もしかして、これは…)

そこはかとなく生まれた希望を胸に、彼らはカカオ豆を巨大臼に移し始めた。


それぞれが格納庫に戻っても、彼らの仕事は終わらなかった。

「ミルク缶を振って、クリームを分離させるのよ」
「カカオとミルクを温めて撹拌してね」
「そこ! だまになってるわよ!」

何となく、何ができるか判ってきて、厳しい声にもめげず少し元気の出た男達が
ようやく作業を済ませたのは、もう黄昏時であった。


だが、できあがったものを指示通り政庁付属食堂に移動させると、

「はぁーい、今日の訓練は終了〜」
「お疲れさま〜、また明日ね」
「用事がない人は、ほら、さっさと帰る帰る」

彼らは女性陣に、なんともすげなく追い払われた。

昼飯も食べずにひたすら働いた彼らであったが、付属食堂は女性陣が乗っ取った
まま、扉は無情に閉ざされている。
しかも、その向こうからは、

「待っててね〜しん…きゃっ、恥ずかしい、やっぱり名前呼べない〜」
「ふふふ、ヤガミ〜、待っててね〜」
「ガミッチ様、甘いものも召し上がるかしら…」

洩れ聞こえる声を聞き、がっくり肩を落とした男達は、デモを再開させる気力も
体力も無くはらぺこのまま、とぼとぼと家路についたのであった。

(後編に続く)

(森沢)

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